ここでは、XYZ PRINTING社 「ダヴィンチ 1.0 Pro」 で、3Dプリントをした際のMEMOを残しておきます。3Dプリント編です。あわせて以下のMEMOもご参考に。
フィラメントは、ABSとPLAを購入しましたが、PLAをまず試しました。3Dモデルは、いわゆるCAD系ではなく、ZBrushで作成したフィギュア系です。ホワイト単色の3Dプリントを行い、最終的にはプラモデルのように色付けするところまでを目指しています。
ZBrushやSubstance Painterなどを調べていた時に作ったこのモデルで試しましたが、最終形はこんな感じになりました。(仕上げ処理後、プラモのように着色しています)
出力用データ(.3w)作成
3Dプリント編は、最初の頃、かなり多くの失敗を繰り返しました。印刷(3Dプリント)を開始すると、無事に終わるまで、縦横高さのいずれかが5,6cmのモデルで数時間かかったりします。その途中でいつの間にか失敗が発生していて(プリンターはそのエラーを把握していないので印刷作業は継続します)、モジャモジャな状態で印刷を続けていることが多発しました。これが起こっているとかなりショックです。
まず、この出力効率を考えてデータを作成する必要があり、出来るだけ短時間で出力を終えるように作った方が無難だと思います。最初何も考えずに作っていた時は、同じデータでも4時間くらいかけて出力したりしていました。これはソフト任せにして、自動的に作成されたものがそうだったのですが、色々試して、ダヴィンチ 1.0 Proの場合、XYZプリンティング社製のXYZmaker Suite(のうちのXYZprint)Mac版で作成するところに行き着きました(作業環境が現在はMacメインであることもあります)。これだと、大福餅くらいの大きさの造形で、だいたい1時間〜2時間くらいになります。同じ3Dモデルであっても、向きやスライスの仕方によってこのくらい差が出てきます。
例えば、このモデル(机に人が座っている)は、机の板を床と水平の状態で印刷するよりも、90度横に回転して垂直にした方が、サポートの量が減るため、短時間で印刷可能となります。
FBX形式のモデルを、Blenderに一度読み込んで、何もせずそのまま.stl形式で書き出したものを使いました(ZBrushから直接.stl書き出しもできますが、すでに色々なソフトでやり取りしていたことでFBXになっていたため)。そのデータをXYZprintで開きます。その際に、データが壊れているとか、大きさが小さすぎるとか、警告が出たりしますが、自動修復してくれるので、それに従います。縦横高さのいずれかを5cmにする形で読み込まれるので、高さ(Z軸)を6cmほどにするように伸縮させました。
この時、数値入力でスケーリングすると、バグでXYZ方向に同じ比率でスケーリングしてくれなかったので、スライダーを使って値を変えた方がいいです。
スケーリングした場合、オブジェクトの位置が変わりますので、移動ツールで「ランド」を押しておきます。自動的にオブジェクトを床面に合わせて配置してくれます。
また、回転ツールでは、「オブジェクトの自動旋回」という機能があり、そのモデルをプリントするのに「材料エコモード」とか「高品質モード」とかあるのですが、これを押すと人形が背中や顔を地面につける形で配置される場合があります。しかし、材料を少なくするにはいいのですが、やはりフィギュア形の場合、足を地面につけるように印刷した方が、最終仕上げがしやすかったので、ここはエコでなくても足を地面につけるように立たせた方がいいだろうと思います(今の所そう思っています)。
例えば、エコモードだとこの方向が自動的に推奨されますが、
この方向↓の方が顔部分など比較的仕上げやすくなります。
モデルの大きさ・配置が決まったら、プロファイルを「PLA」にします。
これは素材によってノズルの温度などの設定が違うため、実際に使う素材と異なる設定にしてはいけません。失敗の原因につながります。
設定の中で「サポート」(頭部など支えが必要となる箇所があるモデルの場合、サポートと呼ばれるものを印刷し、後からそれを取り除きます)をオンにします。そのままじゃ自立できないフィギュアの場合は、ラフトもオンにしておきます。
あとは「準備」を押して「スライス」を行います。3Dプリント用にフィラメントを一筆書きでグルグル描くコースを自動生成する感じですね。仕上がったデータは、.gcodeという汎用的な形式でも書き出せるのですが、ここでは、最終的に印刷を行うソフトが同じXYZプリンティング社のWindows版のXYZware Proというソフトだったので、「.3w」形式で保存して、USBでWindows環境に持って行きました。(僕の環境が特殊なので、一度書き出したりしていますが、当然Macに3Dプリンタが接続されている環境であれば、このソフトから直接3Dプリントできると思います)
.3w形式のファイルは、その後開いても編集することはできず、そのままプリントするだけのファイルとなります。
失敗の最大の原因
最初、3Dプリントのことをよく知らないうちは、こんなに成功率が低いのか、と諦めかけるほど、失敗を繰り返しました。今は、ほぼ成功するようになったので、その原因がなんだったのかを書いておくと、
プラットフォームシート の性能を過信し過ぎた
だったと思います。
印刷中に失敗して、モジャモジャ印刷をしてしまうのには、いくつかの原因があるようですが、僕が経験したもののほとんどは、「造形物が土台に定着せず滑り始めてしまっていた事」です。何があってもプラットフォームと呼ばれる土台から動いてはいけないのです。
このアマゾンの説明ビデオによるとナノレベルでのウンタラという性能で、しっかり造形物を固定できそうな感じですが、今思えば、成功失敗に関わらず、最初の一度だけはその効果があった気がします。つまり、同じシートで何度も使えない。。その割には、このシートは取り外しもそこそこ大変だし、なんと言っても割高です。
10回ほど失敗を繰り返し、本気で対策せねばならないと意識し、先人たちの方法をネットで調べ、最終的に行き着いたのが下記の方法です。2019年現在、ダヴィンチ PRO 1.0における最も重要なテクニックはここ↓ではないかと思います。
3Dプリント中に絶対失敗しないために
ズバリこの3つのアイテムです。
低コストで失敗しなくなりました。スティックのりには諸説あるものの、僕が試した限りでは、消えいろピットがベストです。
まず、マスキングテープを奥側から手前方向に中央付近に2本綺麗に貼り合わせます。1本目を気泡が入らないように貼り、2本目をその1本目のラインに合わせて、できる限りキレーに貼り合わせます。
次に、オブジェクトの配置場所(通常は中央ですね)付近、7cm四方くらいに四角形を描くように、消えいろピットを満遍なく、そこそこ厚めに塗ります。消えいろピットなので、青色が見える状態となりますが、ここがポイントで、この状態で数分放置します。
すると、青色が透明になってくるので、その頃にもう一度塗り、つまり二度塗りして、再度青色になるようにします。
この二度塗りが成功の秘訣ではないかと思います。一度だけでは失敗したことがありますが、二度塗りするようにしてからは100%成功しています。
消えいろピットの二度目の青色が透明になる前に、できるだけ素早く、印刷の開始ボタンを押して、プリントを開始するようにしましょう。これが乾き始めるとまた何が起こるかわかりません。もし乾いてしまってたら、三度目を塗ってもいいでしょう。
この状態で印刷してコンプリートまで行ったら、今度はこの造形物を取り外すのが、ちょっと怖いです。壊してしまいそうになります。この際に最もよかったツールは、「テープはがしカッター」です。この辺は慣れですが、最初はそこそこ思い切りも必要です。今の所、この作業で壊してしまったことはありませんが、慎重に扱いながら、そこそこ勇気を出して取り外しに挑戦しましょう。
ちなみに、このテープはがしカッターは、家中の汚れを綺麗に取り除くことができるお掃除必須アイテムでもあります。激落ちくんとの組み合わせは最強です。
ここまでできるようになったら、フィラメントを効率よく、かつ仕上げやすいように、モデルをどう配置するかの研究をしていくといいと思います。
次のMEMOでは、出力後の仕上げ作業の記録を書こうと思います。
東京造形大学卒業後、マクロメディア(現アドビ)に入社。QAやテクニカルサポートマネージャーとしてFlash、DreamweaverなどのWeb製品を担当。独立後、2007年に虫カゴデザインスタジオ株式会社を設立。2021年東京三鷹を拠点に。最近は、Unity, Unity Netcode for GameObjects, CakePHP, Laravel, ZBrush, Modo, Adobe Substance 3D, Adobe Firefly, Xcode, Apple Vision Pro, Firebaseにフォーカスしています。モバイルアプリ開発情報を主としたブログ「MUSHIKAGO APPS MEMO」の中の人。